- 作者: 樋口晋也,城塚音也
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2017/03/24
- メディア: 単行本
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近年のAIの進化、特にディープラーニングが気になって読みました。現在のAIの技術レベルでは何ができ、何ができないのかが、各研究やニュースの進行状況からわかりやすく述べられています。
ここ数年でこれまで苦手とされてきたクリエイティブ分野でも、線画に色を塗ってくれたり、画像や動画を生成したり、人の顔を見分けてアルバム内を当該人物の写真だけにしてくれたり(iPhone)と着々と進出しつつあって、逆に何ならAIができないんだろう……? 状態だったのですが、
AIに人間の子供のように経験から学ばせる場合(犬と猫を見分けるなど)は学習までに大量の素材を必要とするので、変化しづらい事柄(法律、医学)や明確なルールのあるもの(ゲームなど)には強いが変化の激しい事柄には不向きであるなど、性質面に触れられているので納得しながら読み進めていけました。
AIの東大入学を諦めた話など、文章系は未だただ人間に理があるようですが、星新一賞の一次を突破するくらいの文章は書けるようですし、昨年のGoogleの翻訳アップデートは革新的だと賞賛されてますね。
AIに仕事を取って代わられる可能性
オックスフォード大の准教授が発表した、AIの発達により、将来的になくなる可能性がある仕事をリスト化した論文が数年前話題になりました。たとえば不動産仲介業などが上位にランキングされています。
私も専門学校に入る前、事務職系にしようかな候補に入れたかったんですけど、将来性考えてIT系に進んだ経緯があります。
また2045年にAIが人類の総頭脳を上回るシンギュラリティが起こるという仮説も唱えられており、メトロポリスやターミネーターなどSF作品を想起された方も多いのではないでしょうか。
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現状としては完全にAIに取って代わられる職業は多くなく、多くは人間のサポートを必要としていて、あるいは人間がAIのサポートを受ける形が多くなりそうです。
カスタマーサポートのオペレーターがAIに過去の事例を検索してもらう、倉庫内の配置を頻度に分けて効率的に並べ替えてくれる、梱包は人間がするがロボットが商品をピッキングしてくれるなど。
AIに仕事を奪われると怯えるより、退屈で単調な仕事をAIに任せ、人間が創造的な仕事に取り組む時間を捻出できるのだと前向きにAIを捉えていく考え方にも魅力を感じました。
また弁護士や医師など、習得コストが高い高学歴職ほど、既存のデータが充実している分、AI導入の敷居が低く、恩恵も大きいこと(AI導入によって弁護士費用が安くなれば、これまで利用できなかった層が利用しやすくなる)
一方で、惣菜を弁当に詰めていくような低賃金パートの方が、業務の複雑さ(日替わりの惣菜への対応など)に対して、導入コストに削減コストが見合わないなどAI導入には至らないなどの側面も中々面白かったです。
興味深かったのは車の自動運転の話で、販売網に基づき自動運転のノウハウを積み上げるトヨタと、シミュレーション上で車を走らせるGoogleとの対照的なアプローチであるとか(でもGoogleの大量の地図データがあればシミュレーションでも十分なデータが取れる気がします)。
自動運転が一般的になれば、これまで運転しかできなかった時間で映画を見たりすることができ、新たな需要が生まれるであるとか、最適化された運転によって渋滞が緩和されるであるとか、駅近に絶対的な価値がなくなり地価が変動する可能性があるなどの話は夢があります。
私も一応免許は持ってるんですが、運転に不向きな自覚があるので乗っていませんし、基本的には電車派なのですが、自動運転中にのんびり本を読めるなら好んで満員電車に乗る理由はないです。ドライブスルーなどの食事を利用すれば朝食だって車の中で済ませられるわけですよね(電車で朝食食べる人はいないでしょう)。
危険運転の警告、駐車のサポートなど責任はドライバーにあるレベル2段階で、加速減速操舵を行うレベル3段階も間近ですが、今の所は責任はドライバーにある段階です。責任がAIに移るレベル4までは時間がかかるとみられていますが、車乗れない人間としては早期の技術発展を祈るばかりです。
あと、人間から指示を受けるより、AIから指示を受ける方が贔屓や他意を感じず、判断が間違っていると感じたとしてもAIだからと大目に見られるということで、人間よりもロボット上司の方が業務満足度は高いという実験もあるのが面白いところでした。
というわけで、あまり関心のなかった分野についても知ることができ面白い本でした。